スポーツのけが
スポーツのけが
健康志向の高まりもあり、学生から高齢者まで多くの方がスポーツを楽しんでいますが、スポーツによる痛みが生じると、せっかくのスポーツができなくなったり、求めるレベルでのプレーが出来なくなったりしてしまいます。
当院では症状を出している部位に対する対応はもちろん、その背景にある問題まで考慮したアプローチを行っており、症状の早期改善から再発予防までを目指して治療を行います。
学生では筋力、骨の発達が不十分なことによる問題、成人では筋肉・関節の柔軟性による問題、高齢者では筋力の低下・関節の変性・骨強度の低下の問題など、年齢によりさまざまな問題が背景にあります。
当院では新たに拡散型圧力波(radial pressure wave:RPW)を用いた体外衝撃波治療器の治療を導入いたしました。
新しい治療法であり、従来の治療では治療が難しかった患者様の治療に役立ててまいります。
対外衝撃波とは音波の一種である衝撃波を体内の組織に伝達することで、疼痛改善や組織修復を促す治療法です。ヨーロッパを中心に普及し、低侵襲な治療法として、スポーツ選手にもよく用いられています。有名なところではジャーリーグで活躍している大谷翔平選手など、多くのスポーツ選手も取り入れており、全身の筋・腱の炎症などによる慢性的な痛みに悩んでいる患者様に効果が期待できる治療機器です。
スポーツに関係して発生する運動器のトラブルは、大きく「スポーツ外傷(がいしょう)」と「スポーツ障害(しょうがい)」に分けることができます。「スポーツ外傷」は明らかな受傷起点のある「けが」であり、外から加わる大きな力(衝突、捻り、打撲など)によって起こる捻挫や脱臼、骨折などをいいます。これに対して「スポーツ障害」は、小さな力が筋肉や骨、靭帯、関節軟骨などに繰り返し加わることで起こります。一定の部位で慢性的な疼痛や動かしにくさが持続している状態で、原因としては使いすぎ(オーバーユース)によるものが多くみられます。
捻挫や打撲などの怪我では「この程度の痛みなら大丈夫だろう」と、医療機関へは行かずに市販の湿布薬などで処置してしまうことも少なくないでしょう。しかし、受傷した部位の腫れが非常に強かったり、時間とともに徐々に歩けなくなったりという状態であれば、受診をおすすめします。「歩ければ骨折ではない」と思う方も多くいますが、実際は小さな骨折や部位によっては歩ける骨折は多いため、痛みが強く腫れている場合などは早期に正確な診断を受けることが大切です。
手指の外傷として頻繁にみられるのは、球技における「突き指」ですが、この突き指も骨折を生じていることが思った以上に多いのが現実です。また手首では、転倒時に手をつくことで起こる橈骨遠位端骨折(とうこつえんいたんこっせつ)がよくみられます。
「突き指」は指が固いものにぶつかって、指先に大きな力が加わることで起こる指外傷の総称として、一般的に広く知られています。受傷した指には痛みや腫れ、動かしにくさなどが伴いますが、放っておけばじきに治ると軽く考えられがちです。しかし「突き指」には、想像以上に骨折など重度の損傷も含まれ、中にはすぐに手術が必要なこともあります。「突き指」を軽視せず、整形外科で正しい診断と適切な治療を受けることをおすすめします。
肘では「テニス肘」や「野球肘」といった使いすぎによる障害がよくみられます。肘は、スポーツ時に腕の捻りなど複雑な動作が加わるため、手首を動かす筋肉が付着する金付着部や靭帯、骨、腱などにストレスがかかり、炎症・損傷が起こりやすくなります。発育期の子どもに特有のスポーツ障害が起こりやすい部位でもあります。
上腕骨外側上顆炎は、「テニス肘」とも呼ばれています。肘から前腕には、手首を動かしたり、指を曲げたりする筋肉が存在し、その中の一つの手首を手の甲方向に持ち上げる筋肉に短橈側手根伸筋(たんとうそくしゅこんしんきん)という筋肉があります。テニスなどで同じ動作(主にバックハンドストローク)を何度も繰り返し、過度な負担がかかることにより、この筋肉に亀裂や炎症が生じて痛みが起こるのでテニス肘と呼ばれますが、現実にはテニス以外の日常生活の中で毎日包丁を握る、ゴルフでクラブを握る、繰り返し手で物をもって持ち上げる工場作業などの動作の繰り返しや、パソコンやスマホの操作のしすぎで発症することの方が多いです。治療にはリハビリテーションによる筋ストレッチや対外衝撃波などの治療が有効です。
野球肘とは、野球などの投球動作の繰り返しによって肘関節の軟骨や靭帯、筋肉、腱などの一部の損傷を起こした肘の障害の総称です。肘への負荷が過剰になることが原因で、痛みの部位によって内側型、外側型、後方型に分類されます。状態としては、上腕骨離断性軟骨炎(じょうわんこつりだんせいなんこつえん)や上腕骨内側上顆炎(じょうわんこつないそくじょうかえん)、肘内側側副靭帯損傷、肘頭疲労骨折など様々な病態を含みます。
肩の外傷は、コンタクトスポーツでの衝突・転倒による「鎖骨骨折」や「肩関節脱臼」がよくみられます。障害では使いすぎによる「野球肩」などが多くみられます。
肩関節は可動域のとても広い複雑な関節ですが、その反面、構造上非常に不安定であるため外傷や障害を起こしやすいという特徴があります。
主に野球の投球動作によって生じる肩の障害で、野球以外でもテニスのサーブやバレーボールのアタックなど、頭の上で腕を大きく強く振るような動作を繰り返すスポーツで生じます。肩関節を構成している骨や軟骨、筋肉や腱の損傷が原因で起こります。特にジュニア期には骨が未成熟なことによる特有の病態として上腕骨近位骨端線離開(じょうわんこつきんいこったんせんりかい:リトルリーグショルダー)があります。子どもの骨には成長するための骨端線という成長軟骨があり、この部分は力学的に強度が弱く、負荷が繰り返し過度にかかることで損傷することがあります。
肩甲骨と鎖骨をつないでいる肩鎖靱帯を損傷して、肩鎖関節がずれた状態をいいます。柔道・ラグビーなどのコンタクトスポーツやバイク・自転車事故、作業中の転落・転倒などで肩を強打することで起こります。
スポーツでは腰への負担のかかる動作(ジャンプや捻り)が多く、その繰り返しによって椎間板や椎間関節などにストレスがかかり、「腰椎椎間板ヘルニア」「腰椎分離症」「腰痛症」といった障害が多くみられます。腰周囲だけでなく脊椎全体、股関節まで含めた関節や筋肉の柔軟性の低下や筋力不足なども腰痛を引き起こす原因として考えられており、腰への負担を軽減するための腹筋や背筋の筋力強化も腰痛予防に有効とされています。
多くは10代の発育期に、野球、サッカー、ボート、クラシックバレーなどで腰椎の伸展、回旋を繰り返す運動により、椎弓(椎骨の後方部分)の一部に亀裂が入って起こる疲労骨折の一種でもあります。痛みは、腰のあたりに出現する場合と、お尻や太腿に出現する場合があります。腰を後ろにそらすと痛みが強くなるのが特徴です。10代で発症し、それが原因となってのちに「分離すべり症」に進行していく場合もあります。
膝は身体の中で最も負担のかかる関節のひとつで、スポーツ全般をみてもけがや故障発生が多い部位の一つです。手術を必要とするようなケースも少なくありません。靭帯や半月板損傷といった外傷のほか、ジャンパー膝、オスグッド病といった使いすぎによる障害も多く発生します。
前十字靭帯(ACL)は、膝関節の中心部で大腿骨(だいたいこつ:太ももの骨)と脛骨(けいこつ:すねの骨)をつなぐ、強靭な靭帯であり、後十字靭帯と十字に交差して膝関節を支えています。脛骨が前へずれないように機能し、この靭帯が損傷、または断裂することを前十字靭帯損傷といいます。スポーツ選手の怪我も多く、スポーツなどで膝を捻って発症することが多いです。
半月板は、大腿骨(だいたいこつ:太ももの骨)と脛骨(けいこつ:すねの骨)の間に存在する軟骨性の板で、一つの膝に内側半月板、外側半月板の二つがあります。アルファベットの「C」に似た形状で膝の内側と外側にあり、膝のクッションとして周辺の関節軟骨を保護する役割を担うほか、膝の安定化や脚の屈伸もサポートしています。この半月板が傷ついてしまった状態を半月板損傷といいます。X線(レントゲン)では見えない組織であり、診断にてMRIが必要です。
膝関節内の軟骨が傷んだり、剥がれ落ちたりする障害で、成長期の小中学生男児に比較的多くみられます。膝の大腿骨(太ももの骨)に発症することが多く、まれに膝蓋骨にも起こります。スポーツなどで繰り返される軟骨へのストレスや強い衝撃によって、軟骨の下の骨(軟骨下骨)に負荷がかかることが原因と考えられています。軟骨が剥がれ落ちると関節遊離体(関節ネズミ)となり膝の動きの痛みは制限の原因となることがあります。
膝蓋腱炎は、オーバーユース(使いすぎ)に起因する膝の障害で、ジャンプ動作などを繰り返すスポーツでよく見られることから、ジャンパー膝とも呼ばれています。バレーボールやバスケットボールなどでジャンプや着地動作を頻繁に繰り返したり、サッカーの蹴る動作やダッシュなど、膝の曲げ伸ばしを頻繁に繰り返したりするスポーツで多くみられます。骨端軟骨がまだあるジュニア世代では、オスグット病として膝蓋腱ではなく成長軟骨部位に痛みが起きることもあります。いずれの場合でも診断は症状と身体所見から行い、治療は太ももの前の筋肉である大腿四頭筋の柔軟性改善などのリハビリ主体の治療を行うことが多いです。
足関節・下腿(膝から足首までの部分)は捻挫や骨折などが多く発生する部位です。スポーツでは外傷性の骨折だけでなく疲労骨折もみられ、中足骨、脛骨、腓骨などによく起こります。下腿には「シンスプリント」「アキレス腱炎」なども多くみられ、これらの原因はほとんどが使いすぎによるものです。そのほかの原因としては、筋肉の柔軟性低下、筋力不足、ストレッチ不足などのコンディショニング不良、フォームやシューズの衝撃吸収性の低さなどもあります。
捻挫とは、関節を捻って靱帯などの軟部組織や軟骨が損傷することをいいます。X線(レントゲン)検査で、骨折や脱臼などの異常がありませんが、損傷している部位や程度に応じてギプスなどの外固定や装具治療が必要な場合があります。適切な治療ができないと、関節のゆるみが生じて、いわゆる「クセ」になったり、関節のすり減りが早く起こる、「変形性足関節症」となることがあります。
ランニングなどの運動によって脚のすねの内側に痛みが生じる疾患で、脛骨過労性骨膜炎(けいこつひろうせいこつまくえん)と呼ばれることもあります。
特に陸上競技(中・長距離走)や、バスケットボール、サッカーなどの走ることが多いスポーツで足の疲労が蓄積したときに発症しやすく、中学生や高校生に多くみられます。扁平足(へんぺいそく)や回内足(足首が内側に傾いた状態)などの足の形態異常、筋力不足、足関節の柔軟性の低下、足の疲労などの使用など根本的な問題を改善せずに痛みがある状態で運動を続けると、痛みが慢性化することもあります。